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日本の修士課程・博士課程の在学中のお賃金事情

追記(2020/09/27)

修士課程や博士課程のお賃金事情でお悩みの方は、良かったらこちらも参考にしてください(特に博士課程に進みたいけど、お金事情が厳しい方はぜひ)。

yukr.hatenablog.com

追記(2021/06/12)

あと、最近では私と同様の方法を試した知人(博士課程)がRA+ベンチャー企業での収入(ソフトウェア開発でリモート)で安定して稼いでるみたいです。試してくれてる人もいるんだなぁと思いました。

追記(2021/06/12)

未だにお賃金事情は解消されてない模様。 引用リツイート見てて思ったのが、この給与形態が当然で特に文系の博士には投資する価値がないと主張してる人達がいることなんですよね。もうちょっと優しく物事言える人っていないんだろうか...汗 K(人間) on Twitter: "センシティブな内容だ……… "

Twitterにて、とある海外大学出身の方から

「日本の修士課程・博士課程の在学中のお賃金事情はどうなのか?」

というような質問をいただいたので、私の認知してる範囲での金銭事情をお話できればと思います。もちろん例外も沢山あるので、ここでの内容はほんの一部に過ぎないかもしれないです。しかし、今月は大学院に進むべきかどうかの相談をされたことが多かったこともあり、私の知ってる範囲だけでも発信することで参考になるのではと思ったので、書き留めたいと思います。ある程度私の主観的な考えも混じっているため、何か間違いがあったりこういう例もあるという方がいましたら、ぜひコメントしてくださると助かります。多分、こういう事情を網羅している記事ってあまりないと思うので、皆さんの知っている情報を記入していただければ幸いです。

修士学生の大学院での主なお賃金

大学院での代表的なバイトとして、TA(Teaching Assistant)やRA(Research Assistant)があります。例外として、独立行政法人関連の研究所(一例としては、○研のJRA制度)で連携大学院として研究されている場合や予算が豊富にある研究室に所属している場合には修士学生でもRAが貰える場合がありますが、大体の修士学生の大学院でのバイトはTAになると思います。 TAは先生が受け持っている授業のコマ数にある程度依存するのでかなりばらつきが大きいと思いますが、相場的に授業一回3000円くらいなので、月々2-3万円くらいだと思います(三つ以上担当すればこれより高額になるかもしれないですが...)。ただ、大学院大学のようなところでは学部生がいないため、授業コマ数が少ない分月々1-2万くらいになるのではないでしょうか。これはあくまでも私や周りの友人に聞いた範囲で平均した額ですが、これに無利子の第一種奨学金(という名の借金)88000円が追加されて、<田舎なら生活できるor都心なら無謀なレベルの生活>という感じになるかなと思います。しかし、これはあくまで生活するだけならという話なので、これに授業料や就活費用などが入ってくると、人によっては一時的な赤字が免れないと思います。

また、全ての学生にTAをさせるのは当然不可能なので、それ以外の学生はバイトをすることになると思います。TA以外のバイトの例は沢山ありますが、私の知りうる限りだと本屋や飲食店のバイト、ベンチャー企業での研修、非常勤の塾講師、プログラミング塾のバイト、NGO活動、短期アルバイトなど様々でした。でも割と塾講師が多かったかもしれないです。中には牧場でアルバイトをしていた方もいました笑

注意点になりますが、TAやRAの就労時間は、特に国公立の大学では予め決められている場合が多いです(週に〇時間以上の就労はダメとか、月に〇時間以上働いちゃダメとか)。以上のことから、修士課程の学生が、TAだけで奨学金を借りなくて良いほど稼ぐのは「複数のTAを組み合わせたとしてもほぼ不可能」です。しかも、多くの大学では年間の授業料より少ない額しか稼げないように設定されているのではないでしょうか。

とはいえ修士課程は二年間だけですし、日本の修士学生(特に理系)はメーカーの推薦枠も豊富にあったりでなんだかんだ待遇が良いですから、博士課程ほど苦しくはない気がします(もちろん研究で苦しむかどうかは別腹です)

博士課程学生の大学院での主なお賃金

これは、先ほど申し上げたTAとRAが収入源になると思います。RAはかなり差があると思いますが、相場的には月々4-10万円のような気がします(例えば理研JRAや一部の研究所のRAはこれより高額のところがありますが...)。そして、RAももちろん就労時間の制限があるものが多いので、こちらも複数のRAをしない限り、国立の年間授業料くらいを超えるとは思いますが、年間で100万を超えるような例はそんなにたくさんない気がします。

ただし、博士課程の学生は学振というものがあるので、こちらに申請して素晴らしい研究と認められれば、月20万円と研究費が手に入ります。20万入れば生活は困らないと思いますが、基本的に副業禁止(ただし、最近では大学のTAやRAは可能になった)なので、年間で240~270万くらいになると思います。学振を通る学生は、申請者のうち20%以下だったと思います。しかし、これに申請するのが全体の博士学生の半分以下と言われているので、博士学生全体で計算したら実際に学振をもらっている学生は、全体の20%よりかなり低い確率になるのではないでしょうか(実際は全体の5%に毛が生えたくらいという報告をTwitterで見た記憶があります)。

最近では、確か朝日新聞で学振の支給額だと都内で生活するのが大変という記事が載っていた気がします。確かに都心の場合は20万なので手取りで14万いくかいかないくらいでしょうから、生活は楽ではないと思います。しかも授業料という負のボーナスが年に二回もありますから、貯金はほとんどできないのではないでしょうか。最近では大学院生の授業料減免で話題になってたりしてますが、これがもしも来年から優秀な学生の授業料も免除にならなかったら、今まで授業料が免除だった方にとってはきつい生活を強いられるかもしれません。私立だと独自の学費免除や給付型もあるので一概に言えないですが...汗

そして、学振に通らなかった学生は、例えば生活していくために民間の給付型助成金などに応募するんですが、これが曲者です。通常は複数の団体に応募すると思うので、いくつも書類を作成しないといけなくなります。助成金には通ったけれども、書類を書くのに必死で半年近く研究の進捗がない同期の知り合いもいました。また、助成金に通ったとしても一部は期限までに実績を作らないといけない場合もあり、自分が今までやってきた研究がおろそかになる例もあったみたいです。これもかなり個人差があると思いますが...。

最後に、助成金も通らなかったor申請しなかったそれ以外の学生は、バイトなどを研究の時間を割いて行う場合が多いと思います。ただ、相当きついと聞きますね...。週に4日以上バイトで働くとなると本当に研究する時間がなくて、それを先生が全く分かってくれなくて毎回脅してくるから死にたいという愚痴をウェブでも現実でもそれなりに聞いたことはあります。本当にここまでくると博士課程の闇としか言いようがないですね。相手側にも情があるのか疑います

まとめと個人的な感想

相談された方からは、海外の大学では学費も免除で保険もある形で入学できると仰っていましたが、残念ながら日本ではそのような待遇は絶滅危惧種だと思います(OISTなどはそれに近い環境かもですが...倍率はお察しですw)。 単一のTAやRAでは間違いなく生活が苦しいので、副業やら助成金やら含めて自分で生活資源を探らなければならない場合が多いと思います。

余談ですが、学振しか安定して生活したりキャリアを築く手段がないような固定観念を持っている方が多い印象が個人的にあります。ウェブで検索しても、「学振を通す書き方のコツor成功エピソード」の記事はたくさんあるのに、「学振なくても稼いで研究生活を送れるコツ」みたいな記事ってどこにもなかったです(少なくとも、私が検索した限りでは見つかりませんでした)。他の可能性を探しても「博士課程が辛い」などのような消極的な情報が混在することも非常に多く、欲しい情報に辿り着けている方が少ないのではないかというのが私の見解です。近年ではフリーランスなどをしながら大学院生活を過ごす学生もチラホラ見かけるので、例えばですが博士課程でもある程度安定してお金を稼いで研究もできるような新しい積極的な情報を発信して増やしていくことで、新しい選択肢を見つけられる可能性が増えていくのかなと思います(全然解決策になってないですが)。

かなりの長文になりましたが、大学院のお賃金事情について私の周りの知人の情報も踏まえて発信してみました。拙い文章ですが、少しでも参考になったら幸いです。 最後に、質問してくださったユーザーさんありがとうございました。